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【コラム】デジタル庁の創設「地方自治体」が今準備するべきこと(前編)

更新日:2021年1月19日


菅政権の重点政策

我が国のデジタル化を進めるためには、まずは国・地方の行政がデジタル化を実現し、あらゆる手続きが役所に行かなくても実現できる、必要な給付が迅速に行われる、こういった社会を早急に実現する必要があると思います。」 引用:令和2年9月25日 マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ

 菅総理は昨日総理大臣官邸で開かれた「第3回マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ」に出席し、上記のように述べ、行政のデジタル化を加速させることを強く強調しました。私たちオール・ニッポン・レノベーションでは少子高齢化や人口減少に悩む過疎地域に拠点をおきスタッフも移住しながら各地域のスタッフと東京・横浜のスタッフが連携し、オープンデータ活用やIT化、ICTの導入、オンライン授業等の支援をまさに地方の現場で行ってきました。現在も多くの自治体で支援をしているなか、地方自治体の担当者が抑えておきたい情報を整理しました。政策立案での参考にしていただければ幸いです。

 9月16日に発足した菅政権では、安倍政権が進めてきた重点政策を基本的には継承していくことを発表しました。新型コロナウイルスの感染拡大に対応することと経済の回復に取り組むことを最重要課題である述べ、憲法改正や金融緩和や財政出動などのアベノミクス、東京オリンピックの開催等も継承していくなど、歴代の支持率からも高い内閣支持率65パーセント(9月16、17日に朝日新聞が実施した世論調査)と安定した政権運営が期待されています。


 その中でも変化が期待されているのがIT/ICT分野です。菅総理は官房長官時代からデジタル・トランスフォーメーションに積極的で新型コロナウイルスの感染拡大により、国民のデジタル化へのニーズが高まり、新しい生活様式が求められている社会においてよりデジタル化政策の重要性が高まってきていることから菅総理の政策には追い風が吹いています。例えば、デジタル・ガバメントを支援し、マイナンバーやマイナンバーカード、マイナポータルの対応等で有名なITbookホールディングス<1447>などIT・ICT関連企業の株が菅銘柄として急上昇、地方銀行再編に取り組むと発言したことから、福島銀行(8562)などの地方銀行や、地方銀行との連携をすすめるSBIホールディングス(8473)の株価も値上がりました。その中でもItbookホールディングスは、行政デジタル化への思惑で上場来高値も更新、PER(会社予想)は、9月25日大引け時点で391.42倍、15倍程度が平均とされる中でまさにバブルが発生しています。それだけ市場の期待も集まっているのです。

ことば:デジタル・ガバメント。デジタル技術の徹底活用と、官民協働を軸として、全体最適を妨げる行政機関の縦割りや、国と地方、官と民という枠を超えて行政サービスを見直すことにより、行政の在り方そのものを変革していくこと(政府CIOポータル デジタル・ガバメント)=関連「デジタルファースト法」2019年5月可決。

デジタル庁の役割  現在デジタル化に関連する政策は各省庁に散らばっています。例えば、オンライン診療や過疎地域等における遠隔診療は厚生労働省が、「スーパーシティ」や5G、デジタル技術の社会実装などは内閣官房、行政のIT化やマイナンバー等については総務省、テレワークの支援や中小企業のECサイト構築支援などは経済産業省、教育現場におけるオンライン化、例えばGIGASスクール構想などは文部科学省と、各省庁に散らばるデジタル政策の司令塔を担い、横断的に取り組むとでデジタル・トランスフォーメーションを加速させることを目指しています。  地方自治体での政策を考えていく中で、地方自治体と中央官庁とのギャップ、地方自治体と民間企業のトレンドとのギャップ、そして国際社会における地方自治体の役割を整理していかなければなりません。例えば、新型コロナウイルスの感染拡大がはじまる以前より、多くの書類もメールでやり取りされている時代、例えば請求書や見積書もメールでやり取りをされています。民間同士の仕事がスピーディーに進む中、世界中のビジネスと闘い国際的な立場を維持するためにも行政のスピーディーさや事業の簡略化が欠かせません。筆者も行政とのお仕事の中で、お見積書や請求書に実印を押し、原本を提出してくださいと言われ、また見積書の内容修正(事前協議外の事項)を何度も求められ、「見積書発行手数料」や「請求書発行手数料」を行政に請求したいほどでした。しかし、行政手続きのオンライン化等は法律により進めることが決まっており、国と地方政府とのギャップがみられています。マイナンバーにおいては、コンビニ交付サービスが利用できる自治体は、全国約1700自治体中、751市区町村(2020年9月26日現在)。今、住んでいる地域ではコンビニ交付サービスが使えても隣の自治体や引越し先の自治体では利用できないなど、自治体間でも未だ格差が存在しています。これらについても全自治体での実施を目指しており、住民のニーズを踏まえながら優先順位をつけマイナンバーを活用した政策も準備していかなければなりません。  印鑑文化の変化も地方自治体に波及することでしょう。河野太郎氏が行政改革担当大臣に任命され、すぐに話題になった「印鑑の原則廃止」。現在1万種類以上の印鑑による押印が必要な手続きが行政にはあるといわれ、それらの効率化によりペーパーレスも期待されています。河野大臣は月内に約1万件あるといわれる行政手続きをどうしても押印が必要な手続きなのかどうか、必要なものについて各省庁に回答を求めており、回答がなかったものについては10月早々、押印枠がある書類についても枠を無視して運用してもいいという方針を発表しています。これらの波が地方自治体に来ることは必至で、地方自治体独自の申請書等については多少の猶予があっても、国や都道府県が関係する交付金関連事業等は印鑑の廃止やデジタル化など速やかな対応が求められると予想されています。人口が少ない自治体では行政職員の人数も少なく、短い期間での政策立案→実行は不可能に近く、これらのデジタル化については、今のうちに横断的なワーキングチームを立ち上げ準備をすることでスムーズな政策実行が期待されます。 菅政権・政府のデジタル関連政策や方向性

 既に様々な政策の実施が発表されています。また安倍政権の時に決まっていたデジタル関連政策もいよいよ実装される時を迎えました。主要な政策を下記にまとめましたので、各自治体のスケジュール立案にご活用ください。

  • 地域課題解決型ローカル5G等の実現 に向けた開発実証 2020年度~

  • マイナポイントキャッシュレス決済による付与対象期間 2021年3月31日まで

  • デジタル庁の基本方針を定める 2020年末まで

  • デジタル庁設置のための関連法案提出 年明けの通常国会

  • 東京から地方に移住しテレワークする者に100万円の支給 2021年度から

  • 東京から地方に移住しIT関連事業の起業に300万円の支給 2021年度から

  • 地方自治体が主体となり行うテレワーク整備支援に交付金 2021年度から

  • サイバーセキュリティ人材の育成 2021年度から

  • 自治体デジタル化基盤整備 2021年度予算を現在の5倍39億に

  • マイナンバーカードの全国民への普及 2022年度末

  • 5G 5年以内に全国の約98%のメッシュで基地局展開 2024年まで

  • 自治体ごとに異なる業務システムの統一  2025年度末まで (住民記録、地方税、福祉など自治体の主要業務を処理するための情報システム)

  • ビヨンド5G 2030年までの下記目標達成 (1万倍の通信トラフィック・1,000万台/km2の同時接続・超低コストIoTセンサー・20年以上のバッテリー持続・最高伝送速度100Gbps以上・現在の10倍以上・超高精度なビームフォーミング・通信遮断時間率10-6・同期ずれは200ナノ秒以下・遅延は0.3 ミリ秒以下)

  • 年齢・性別・障害の有無・国籍・所得等に関わりなく、誰もが多様な価値観やライフスタイルを持ちつつ、豊かな人生を享受できる「インクルーシブ」の社会(2030年代に実現したい未来の姿「I:インクルーシブ」)

  • 地域資源を集約・活用したコンパクト化と遠隔利用が可能なネットワーク化により、人口減でも繋がったコミュニティを維持し、新たな絆を創る「コネクティッド」の社会(2030年代に実現したい未来の姿「C:コネクティッド」 )

  • 設計の変更を前提とした柔軟・即応のアプローチに